三宅 陽一郎

株式会社スクウェア・エニックス リードAIリサーチャー

デジタルゲームの人工知能の開発者。ゲームAI開発者としてデジタルゲームにおける人工知能技術の発展に従事。国際ゲーム開発者協会日本ゲームAI専門部会設立(チェア)、日本デジタルゲーム学会理事、芸術科学会理事、人工知能学会編集委員。共著『デジタルゲームの教科書』『デジタルゲームの技術』『絵でわかる人工知能』(SBCr) 、著書『人工知能のための哲学塾』(BNN新社)、『人工知能の作り方』(技術評論社)。最新の論文は『大規模ゲームにおける人工知能 ─ファイナルファンタジーⅩⅤの実例をもとに─』(人工知能学会誌 2015年、学会Webにて公開)。


【Day1-7】 次世代のテクノロジー

デジタルゲームに息づく生命:FINAL FANTASY XV における人工知能

 デジタルゲームのキャラクターは、3Dゲームの世界の中で、複雑な地形、たくさんの物、そしてたくさんの他のキャラクターたちに囲まれて生きています。
キャラクターは自分自身で世界を感じ、周囲の環境を認識し、状況を理解します。そして、そこから意思決定を行い、身体を動かします。これらを与えられた
ゴールや役回りを果たすためにリアルタイムに行うのです。本講演では、「FINAL FANTASY XV」(SQUARE ENIX, 2016) における自律型のゲームキャラクターの
振る舞いをお見せすることで、それらを支える人工知能技術について解説いたします。
 かつて、ファミリーコンピューターやスーパーファミリーコンピューター(任天堂、1983年、1990年)の時代のゲームにおいては、ゲームキャラクターはあらかじめゲームデザイナーによって俯瞰的な視点から作成されたスクリプトによってコントロールされていました。これらは「スクリプテッドAI」と呼ばれる人工知能で、プレイヤーの行動に反射的に行動するものです。しかし、デジタルゲームが複雑化するに伴い、この手法は効果を失って行きます。デジタルゲームの複雑な環境に適応するためにゲームキャラクターの人工知能はより自律的なものへと変化して行きました。
 ゲームキャラクターの人工知能はまず与えられた役割を果たすために、自分の身の回りの問題を解決する必要があります。ゲームキャラクターはそこで単に環境を認識するだけではなく、自分自身の身体と心をも考慮に入れつつ行動せねばなりません。ゲームキャラクターの意識モデルは、ゲーム産業においても、アカデミックにおいても、長らく研究されて来ましたが、その歴史は、2001年にMITの 「Synthetic Characters Group」が提案したモデルが端緒となっており、「C4認識アーキテクチャ」と呼ばれています。このアーキテクチャは、多数のゲームタイトルにおけるキャラクターの人工知能に適用され、サブサンプション・アーキテクチャ、新しい意思決定アルゴリズム、学習システムなどをを内包しながらますます発展しています。本講演では、その最新のゲームキャラクターの人工知能モデルについて解説いたします。