甘利 俊一

東大名誉教授
理化学研究所脳科学総合研究センター特別顧問
株式会社アラヤ リサーチアドバイザー
日本

数理脳科学者。東京大学名誉教授、理化学研究所脳科学総合研究センター特別顧問、アラヤ リサーチアドバイザー。情報幾何学の創始者である。情報幾何学は統計、信号処理、情報理論、機械学習など様々な分野で広く用いられている。神経回路網の数理的研究のパイオニアでもある。現在も情報幾何学を用いて、統合情報理論やWasserstein距離の研究などに取り組んでいる。


【Day 1-7】次世代のAIテクノロジー

ロボット・コンピュータは意識を持てるのか ―― 数理脳科学者の考え

人類は考える脳を持ち、知能を育くみ、ついには文明社会を築き上げた。さらに、人工知能を考案し、知的な機能をコンピュータやロボットに付加しようとしている。そのために脳が知能を実現する仕組みを考え、これをもとにさらに素晴らしい人工知能を実現したい。
 脳は多層の神経回路網のダイナミックスで情報を処理している。ここに知識を蓄え、学習し、状況に応じた素早い決断を下す。これを曲がりなりにも模倣したのが深層学習であるが、ここでは意識は必要ない。脳が下す素早い決断をそのまま実行せずに、他の多くの情報と融合して吟味・再考するのが意識であり、心である。これが人と動物の大きな違いであり、人類はこれを長年の進化の結果獲得した。人工知能がさらに発展するためにはこれが必要である。
 心の働きとは何だろう。ロボットは心を持てるだろうか。そうすれば人工知能は人類を凌駕するのだろうか。これからの社会と人工知能に思いを馳せて、人類社会の未来を展望したい。